ゆきねこ日記

酒と温泉とカメラ(iPhone)と映画が好きな道産子社会人のブログ

予告編詐欺 まさかの感動大作 映画感想 『空白』

こんにちは。ゆきねこです。
今回は最新映画感想です。

今回は古田新太主演『空白』を観てきました。
『ヒメアノール』の吉田恵輔監督と7年ぶりに主演を務める古田新太とのタッグを組んだ映画です。
予告編を観た段階で、かなり重いテーマを取り扱っていることはわかっていたのでかなり覚悟して劇場に足を運びました。
いやー。予想通りまあ重かった…。笑
ただ、重たくて陰鬱なだけの映画ではなく、いろんな意味で心が揺さぶられる映画でした。
早速あらすじ紹介と感想行きましょう。

あらすじ

はじまりは、娘の万引き未遂だった―。
ある日突然、まだ中学生の少女が死んでしまった。スーパーで万引きしようとしたところを店長に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれたというのだ。娘のことなど無関心だった少女の父親は、せめて彼女の無実を証明しようと、店長を激しく追及するうちに、その姿も言動も恐るべきモンスターと化し、関係する人々全員を追い詰めていく。
映画『空白』公式サイトより抜粋



www.youtube.com

古田新太松坂桃李『空白』本予告映像




予告編からも分かるように、一人の少女の死をきっかけにその周囲の人、特に少女の父親が狂っていく様子が描かれた映画ですね。
どう転んでもよい結末は迎えなさそうな…
腹を括って観て参りました。以下ネタバレありの感想です。

感想

いい意味での「予告編詐欺」映画

予告編を観た段階ではきっと「暴走する父親の狂気」がメインテーマの映画なのかな?と思った人が多いはず
悪役=古田新太さんが演じる父親で最終的にサイコスリラーになるんでは?みたいな
私も完全にそう思ってました
しかし、いい意味で予告編に騙されましたね。

本編での古田新太さん演じる添田は一言で表現するなら「粗暴だけど人間味のある人」です。
予告編からもわかるように、娘の死をきっかけに家族・スーパーの人たち・メディア・世間の人たちに対してかなり乱暴な言動をとっている様子がみられました。
でも、これらの言動の全てがあくまで娘のためという一貫した行動原理の下で行われていました。
(ずっと「花音のため」って連呼しながら色んなことやらかして)
生前の添田の娘・花音と過ごすシーンでは、言葉使いが乱暴ながらも娘のことを心から大事にしているんだということが伝わってきました。
そんなところからも添田は実は愛情深い人間なんだなぁと思いました。

その愛情っていうのが娘だけではなく元妻・翔子(田畑智子)と添田の部下・野木(藤原季節)なんかにも向いてましたね。

見かけによらず、身内をとても大事にする人間、それが添田という男でした。


一体悪者は誰なのか?

これこそが本編において最重要な問題提起だったのかな?
そしてこの質問が投げかけられたとき、本当に悪いのはメディアもしくは事件に関わっていない世間一般の人々だと考えた人も多いはず。
私もこの考え方自体には非常に納得です。特にワイドショーの報道の仕方にかなり悪意があって、テレビが嫌いになりそうでした…

世間の人たちの興味本位な悪意が向けられているシーンも目立ちましたね。
最近色んなドラマや映画で取り上げられているネットリンチも裏テーマなのでは?と思わせる節も目立ちました。

本当に偶然なんですが、同時期に公開になった『由宇子の天秤』という映画も似たようなテーマを扱った映画みたいです。
こちらも是非チェックです。

www.youtube.com
映画『由宇子の天秤』予告編


添田やスーパーの人々に興味本位の悪意を向けて、不用意に傷つけていく様子を見て、本当に胸糞が悪くなり自分はこんなこと絶対にしないぞ!と心に誓いました。
が、ここで一旦立ち止まって考えました。
果たして自分は絶対に加害者側にならないのかな?

この映画の中では悪意を向ける俗にいう悪者サイドがかなり過剰に描かれていた気がします。
ですが、ここまでならずともインターネットが普及したこの世の中で自分の発信が誰一人として傷つけない事ってあり得るのかな?
多分無理なんですよね、何故なら自分の発言が全く意図していない別の捉えられ方をしてしまうこともあるから。私も絶対に100人くらいは無意識に傷つけているのかな~とも想像してしまいます。
この最たるものがいわゆる「炎上」ですよね。

だから、完全に加害者にならないぞと誓うよりも、特に自分のネット上での言動が少なくとも世の中の10人くらいの心に傷をつけてるんだなと業を背負いながら生きていくくらいでちょうど良いのかなと思いました。

魅力的な役者陣たち

この映画とにかく役者陣が素晴らしかったと思います。
主役の古田新太松坂桃李はもう言わずもがな化け物級の実力をもっている俳優さんなので改めて言及しません。
ここで特に取り上げたいのは、花音役の伊藤蒼さんと野木役の藤原季節さんです。

藤原季節さんは最近だと『佐々木、インマイマイ』や『街の中で』などの映画で主演を果たしていた28歳(2021年10月現在)の俳優です。
すごーくざっくりした俳優としてのイメージとして、ふらふらした若者っぽい役が多いなぁと思っていました。
なのですが、今回彼が演じていた野木はThe 弟子といった感じのとても愛おしいキャラでした。
どうも憎めないんですよね。だからこそ添田からも大きな信頼が得られてたんだと思います。
余談ですが、藤原季節さんはどうやら北海道札幌市出身らしいです。同じ道産子!とっても親近感。

そして伊藤蒼さんは『湯を沸かすほどの熱い愛』で子役として出演していた女優さんです。
最近では『おかえりモネ』にも出演していましたね。
何がすごいって、本作では数少ないセリフと出演シーンだったのにも関わらず抜群の存在感を発揮していました。
あのとてつもない存在感で、何と16歳(2021年10月現在)らしいのです!
信じられない、、、初めて清原果耶さんを見た時のような衝撃を受けました。
次世代の超人気女優になりそうな予感。

まとめ

映画『空白』の感想をお届けしました。
一人の少女の死を軸に翻弄される人間模様を絶妙に描きながら、私たちの心にも今一度考えることがあるのでは?と投げかけてくるような心に残る作品でした。
公開劇場はちょっと少ないですが、気になる方はぜひ劇場にて!

それではまた次回の記事でお会いしましょう!